新・利他の経済学-13 The New Economics of Altruism

生産者行動  Producer behavior

MR=MC

企業行動、利潤最大化行動の最大のポイントはMR=MC、つまり限界収入=限界費用です。実践経済学では、これをおさえることが最も重要です。以下述べるのは、それをたかきこむためです。長期の企業行動としての投資、資本については別章で述べたいと思います。

◎ 企業こそ その行動の 原理とは MR(エムアール)イコール MC(エムシイ)と知れ (経済学短歌)

生産関数

生産関数というのは、労働、資本などの生産要素を投入(インプット)して、生産される最大可能な生産物の数量(アウトプット)の関係をあらわしたものです。生産量をX、生産要素をI1, I2, …. Ii とすると、生産関数は、

X = F (I1, I2, …, Xn) = F(Ii) (i = 1, 2, …, n)

今、単純化のために、生産量Xを、生産要素としての労働L とすると、生産関数は、

X = F (L)

通常、経済学では、生産関数は、以下のようにS字型を想定します。

これは、労働Lの投入量を追加的に増やしていくと、当初は収穫逓増がはたらき、X財の追加的な生産量が増えていきます。しかし、ある点を過ぎると、収穫逓減がはたらくようになる、つまり、追加的な労働Lの投入量に対して、X財の追加的産出量が減っていくためです。

様々な経済事象に対して、収穫逓増フェーズにあるのか、収穫逓減フェーズにあるのかは、とても重要です。テクノロジーの世界では、収穫逓増が重要であると言われます。多くの人が使うようになればなるほど、ネットワーク経済性がはたらき、より多くの人が使うようになるからです。ネットワーク経済性というのは、収穫逓増が定常的にはたらくような状態です。このような状況では自然独占が発生します。しかし、このような状況は特殊であるとし、通常はS字型、つまり、ある点からは、収穫逓減がはたらくようになると考えます。

◎ 通常の 生産関数(セ-サンカンスウ) S字型 当初逓増 その後逓減 (経済学短歌)

◎ 通常の 生産関数 右上がり 収穫(シューカク)逓増 収穫逓減 (経済学短歌)

◎ 収穫の 逓増(テーゾウ)はたらく テクノロジー 勝ちが勝ちよぶ ネットワーク経済(ケーザイ) (経済学短歌)

費用関数

生産関数から費用関数を導き出します。これは、2つのステップをとります。

1.生産要素としての労働を投入するとX財が生産されます。それをあらわしたのが生産関数X=F(L) です。これは、L→Xの関係です。これをまず、X→Lの関係におきかえます。例えば、生産関数がX=WLだったとします。すると、L=X/W になります。これを関数の形にすると、L=L(X) です。

2.次にX財生産の費用をXの関数で表します。つまり費用関数C=C(X)を導き出す。すると、C=C(X)=W・L(X) となります。

例えば、X財X’生産するための労働投入量は、L’=L(X’)になります。X’生産するための費用C(X’)は、L(X’)に賃金Wをかけた、C’=C(X’)=W・L(X’)となります。これを一般化すると、C = C(X) = WL(X) となります。図示すると以下のようになります。Cは、L(X)を縦軸にW倍したものです。

◎ 生産の 関数もとに その財の 費用関数 導き出すよ (経済学短歌)

◎ 通常の 費用曲線 右上がり 当初逓減 のちに逓増 (経済学短歌)

◎ 通常の 費用曲線 右上がり 当初上凸(ウエトツ) のちに下凸(シタトツ) (経済学短歌)

◎ 限界の 費用曲線 おわん型 当初逓減 のちに逓増 (経済学短歌)

限界費用

費用関数、費用曲線が導き出されたので、次は企業行動で最も重要な限界費用について述べます。なぜ最も重要かというと、企業の利潤最大化条件が、(限界費用逓増の局面において) 限界費用=限界収入であるからです。経済学的な発想とは、「限界」、つまりある要素を追加的1単位増やした(減らした)とき、それと因果関係にある他の要素は追加的にどれくらい増える(減る)か、という視点で事象をみることです。N.G. マンキューも「限界で考える」ことをエコノミスト的発想の10の原則の一つにあげています。

経済学の十大原理の第三: 合理的な人々は追加的一単位(限界)で考える  「経済学原理」N.グレゴリー・マンキュー 
TEN PRINCIPLES OF ECONOMICS – Principle 3: Rational People Think at the Margin  “PRINCIPLES OF ECONOMICS” N. Gregory Mankiw

◎ 追加的 一単位での 効果こそ エコノミストは 着目するよ (経済学短歌)

◎ 追加的 一単位での 変化こそ 経済学の 肝(キモ)としるべし (経済学短歌)

◎ 限界に 着目するは 実践に 経済学を 活かす道なり (経済学短歌)

結論から言うと、限界費用は、費用曲線の接線の傾きです。つまり、X財の生産量を追加的1単位増やしたときに、追加的にかかる費用です。下図の通り。

◎ 限界の 費用というは 財生産(セーサン) 費用曲線 接線傾き (経済学短歌)

◎ 限界の 費用(ヒヨー)はある財 一単位 生産(セーサン)増やすに 追加の費用 (経済学短歌)

収入関数

収入関数Rは、価格Pに生産量Xをかけたものになります。つまり、R=R(X)=PX となります。完全競争市場モデルを前提に、企業がプライステーカーとして行動しているためです。

生産したものはすべて販売されると仮定します。これは、ミクロ経済学が古典派経済学を基礎としているためでもあり、またシンプルなモデルで企業行動の本質をえぐりだすためで、経済学のだいご味でもあります。

限界費用MCは、価格Pになります。収入曲線は、原点から傾きPの右上がりの直線になります。限界収入MRは、収入曲線の傾きなのでP、平均収入は、原点から収入曲線に引いた直線の傾きなので同じくPになります。つまり、MR=AR=P です。

◎ 限界の 収入こそは 価格だよ 収入関数(カンスー) 傾き価格 (経済学短歌)

◎ 収入の 関数こそは 右上がり 傾き価格 限界収入 (経済学短歌) 

◎ 限界の 収入こそは 価格なり 価格の価格 ゆえんなりけり (経済学短歌)

 

利潤最大化条件

以上より、収入関数と費用関数が導きだれました。利潤最大化条件をみます。企業が利潤を最大化を目的に行動するのは、独占や外部不経済がある不完全競争市場を除けば、稀少な資源を効率的に配分(うまく振り分け)し、諸国民の富(Wealth of Nations)を高める利他の行動です。

利潤最大化生産量は、下図よりX*になります。X*では、MR=MC (限界収入=限界費用) となっています。

利潤最大化条件は、第一に、収入曲線と費用曲線の接線の傾きが等しくなる、つまり、限界費用MCが限界収入MR等しくなること。第二に、MC曲線が、MR曲線の下から上に通りぬける局面にあること、つまり、MCが逓増局面にあるときです。これは、X財の追加的1単位生産した場合に、X<X*の時には、MC<MRですが、X>X*の時には、MR<MC となるためです。つまり、X*を超えると追加的1単位生産することによる限界費用が、限界収入(=価格)を上回るため、企業の粗利潤が減少します。したがって、利潤最大化生産量はX*になります。

利潤最大化条件は、第一に、限界収入MR=限界費用MC(=価格: 完全競争のとき)、第二に、限界費用が逓増局面にあるとき、になります。基本的には、MR=MCを頭にいれておけば実践においては問題ありません。

◎ 企業こそ 利潤最大 原則は MR(エムアール)イコール MC(エムシイ)と知れ (経済学短歌)

◎ 企業利潤(キギョーリジュン) MAX(マックス)条件 限界の 収入等し 限界費用 (経済学短歌)

◎ 利潤をば 最大化せし 生産(セーサン)量 限界費用 逓増(テーゾウ)局面 (経済学短歌)

◎ 限界の 収入・費用 同じとき 利潤最大 生産(セーサン)量なり (経済学短歌)

◎ 利潤をば 最大化せし 条件は 限界の収入(シューニュー) イコール費用(ヒヨー)なり (経済学短歌)

以上が、企業行動の理論において、(労働、資本の投入量の決定を除いて)最も重要な点です。ミクロ経済学は、ち密な論点が多いのですが、実践的な立場から重要なポイントに絞って述べました。

損益分岐点、操業停止点 (参考)

補足として、損益分岐点BEPと操業停止点について参考程度に述べます。実践経済学において重要なのは、ポイントをおさえてシンプルに考えて行動することです。企業行動の原則はあくまでMR=MCです。

価格P、限界収入MRが限界費用MCを上回っている間は、企業は、生産することが利潤最大化行動です。限界費用MCは、費用曲線上の接線の傾きです。価格PはF点から右上がりの直線です。AVCはF点から費用曲線上に引いた直線の傾きです。D点では、MC=AVCになります。D点でMR=MC(=P)が成立しています。

費用関数は、下図のように縦軸切片が固定費Fになります。Fを基点にS字型の費用曲線が描かれます。限界費用MCは費用曲線の接線の傾き、平均費用ACは原点から費用曲線上の点に引いた直線の傾きです。ここで、平均可変費用AVCというとらえ方がでてきます。それはF点から費用曲線上の点に引いた直線の傾きです。

以上、MC、AC、AVCを曲線として描いたのが下図です。ここで、損益分岐点BはAC=MCのB点です。損益分岐点は純利益がゼロになる点です。しかし、B点は操業停止点ではありません。なぜならB点(P=P’)では粗利益が発生しているからです。結論から言うと、操業停止点DはAVC=MCのD点になります。D点(P=P”)では粗利益がゼロになります。D点は価格Pが上図のF切片から費用曲線に引いた接線の傾きがAVC”の点です。つまり、価格PがP>P”のときは粗利益が発生することなります。粗利益ゼロのD点が操業停止点です。

企業の利潤最大化行動のポイントは、損益分岐点、操業停止点ではなく、限界収入=限界費用、MR=MCです。

◎ 損益の 分岐点には 落とし穴 基本はあくまで MR=MC(エムアールエムシー) (経済学短歌)

◎ 損益の 分岐点には こだわるな MRイコール(=) MCが基本 (経済学短歌)

◎ 操業の 停止点こそ うらがわは MRイコール(=) MC(エムシイ)と知れ (経済学短歌)

以上

by Kota Nakako

2021/12/8

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