新・利他の経済学-17 The New Economics of Altruism

経済成長 Economic Growth

経済成長の源泉

経済成長をうながす生産要素としては、①土地(通常は、与えられたもgivenとします)、②労働、③資本、④テクノロジー、⑤起業家精神などがあります。経済成長には、労働、資本の投入量を増やすといったハード面だけでなく、人々のやる気、創意工夫、起業家精神、プロセスやテクノロジーのイノベーションなどのソフト面が深く関わっています。したがって、経済成長には、生産性の向上をもたらすイノベーション、クリエイティビティ、さらに、それらをうながすインセンティブがとても重要になります。また、経済成長に必要な社会的条件には、①市場が情報の流通交換をうながすこと、②知的所有権の保護、③金融市場が効率的な財サービスの流通交換をうながすこと、があります。

◎ 経済の 成長促す 要因は 労働資本 技術革新 (経済学短歌)

◎ 経済を 成長さすは 人々の やる気高める インセンティブだ (経済学短歌)

◎ 経済を 成長さすは 資本から 投資うながす インセンティブだ (経済学短歌)

◎ 経済を 成長さすは テクノロジー 革新うながす インセンティブだ (経済学短歌)

生産性カーブAPF (経済成長=一人当たり実質GDP成長) 

生産性カーブ(APF: 総生産関数)は、経済成長を、一人当たり実質GDPの成長としてとらえます。一人当たりの豊かさの成長といってもよいでしょう。APFでは、①一人当たり資本量を横軸に、②一人当たり生産量を縦軸として、総生産関数APFをあらわします。 一人当たり資本投入量を増やしてどれだけ、一人当たりの生産量が高まるか。APFが高くなるほど経済成長率は高くなります。勿論、資本投入(₌投資)を増やすには、その裏付けとなる貯蓄が必要になります(ISバランス)。

一人当たり資本投入量を増やすと(K/L1 -> K/L2)、技術水準が一定とすると、一人当たり生産量は、Q/L1 Q/L2 へ増加します。これは同一APF上での移動です。有効なテクノロジーのイノベーション(技術革新)はAPFの上方シフトとしてあらわされます。したがって、同じ労働投入量K/L1 でも、一人当たり生産量はQ/L2 と高まります。さらに、労働投入量をK/Lに増やすと、生産量はQ/L3 にまで高まります。

APFは、所与のテクノロジー(技術水準)での一人当たり生産量(労働生産性)と一人当たり資本の関係を示したものです。一人当たり資本投入量K/L を追加的に増やせば増やすほど、追加的な一人当たり生産量Q/L は逓減していくと想定されます(収穫逓減:law of diminishing returns)。一人当たり生産量Q/L(労働生産性)は、実質一人当たりGDPです。

経済成長(労働生産性の上昇)の源泉は、資本の成長(同一APF上の移動)と、技術革新(APFの上方シフト)に分けることができます。

◎ 経済の 成長こそは 生産性 資本労働 向上による (経済学短歌)

◎ 経済の 成長エンジン パーキャピタ 資本投入と 技術革新 (経済学短歌)

三分の一ルール ≒ 資本分配率 (三分の二 ≒ 労働分配率)

APFアプローチでは、資本分配率と労働分配率が経済成長の係数として意味を持ちます。例えば日本の労働分配率はおおむね60~70%(労働分配率=名目雇用者報酬/名目国民所得 出典:内閣府「国民経済計算」)です。先進国の資本分配率はおおむね三分の一です(労働分配率≒三分の二)。これは、一人当たり資本K/L が1%増加すると、一人当たり生産量Q/L は、1/3%成長する、というものです。例えば、Q/Lの増加が+5%だったとします。K/Lの増加は+4.5%。K/LのQ/Lへの貢献は、4.5%の三分の一である1.5%。技術革新の貢献は、3.5%(=5%-1.5%)です。つまり、経済成長(一人当たり実質GDPであるQ/Lの成長)は、一人当たり資本K/Lの増加(これは資本深化capital deepeningともよばれます) と技術革新によってもたらされますが、技術革新の貢献は、資本深化の貢献の2倍になる、ということです。ただし、資本深化と技術革新の効果は分析上、2つにわけられますが、相乗的に効果を発揮するといってよいでしょう。つまり、資本深化が技術革新をもたらし、技術革新が資本深化をもたらす。

経済成長の加速

では、経済成長を加速させるために、何が必要か? 第一に、資本深化を可能にする貯蓄の増加です。ISバランスが示すように投資と貯蓄は同じコインの表裏の関係にあります。第二に、人的資本への投資があります。人的資本は、生産性の向上と技術革新をうながします。第三に、技術革新そのものです。あらたなテクノロジーが、人的・物的資本の生産力(生産性)を高めます。

◎ 経済の 成長のもと 忘れるな 投資ささえる 貯蓄の増加 (経済学短歌)

◎ 成長で 資本投下を 増やすには 裏付けとなる 貯蓄が大事 (経済学短歌)

成長会計アプローチ

成長会計アプローチは、経済成長を、①労働の増加率(人口成長率)、②資本の成長率、③技術水準の成長率(技術革新)に分解します。つまり、

%Q growth =  α x (% K growth) + ( 1 – α ) x (% L growth) + T.C.

Q: マクロ生産量、K: 資本、L: 労働人口、T.C.: 技術革新、α:資本分配率、1-α:労働分配率

上記に三分の一ルールというのは、資本分配率α=1/3 です。

これは、マクロ生産関数としてのコブ=ダグラス型生産関数から導くことができます。マクロ生産量Yは、

Y=AKα L1-α   (Y: 生産量、A: 技術水準、K: 資本、L: 労働、α: 資本分配率、1-α: 労働分配率)

これを全微分して近似すると、

ΔY/Y=ΔA/A + αΔK/K + (1-α)ΔL/L つまり、経済成長率=技術進歩率+資本分配率x資本成長率+労働分配率x人口成長率

◎ 経済の 成長のもと 人口と 資本の成長 技術革新 (経済学短歌) 

資本労働投入量の決定

この資本と労働の分配率は、恣意(しい)的に決まるわけではありません。市場の規律、メカニズムにしたがって決定されます。企業は、適切な(効率的な)生産をするために、労働資本の投入量を、労働と資本の限界代替率MRSKL が、予算線の傾き r/w (r: 資本レンタルコスト、w: 実質賃金)になるように決定します。予算線の傾きは、わかりやすくいうと資本と労働の価格比です。このような市場メカニズムによって資本の分配率(労働の分配率)ははおおむね三分の一(三分の二)になっているというわけです。

近年、労働の分配率が先進国で低下してきているということが言われています。この背景には、人口の少子高齢化、労働の限界不効用(余暇の効用)が高まっていること(=実質賃金の上昇)、テクノロジー、IT技術革新によって資本が相対的に安くなっている、賃金の硬直性といったことが考えられます。これ以外に制度的、社会的要因が関係しているかもしれません。

わたしは一人当たりの豊かさを求める人々の行動、テクノロジーの進歩が大きく作用していると考えています。ここでは、簡単に触れるにとどめます。

また、一人当たりの経済成長率Y/L=y => Y=yL より、

ΔY/Y=Δy/y + ΔL/L   つまり、経済成長率=一人当たり経済成長率+人口成長率

日本の人口減少は、一人当たりの豊かさを求める人々の行動にあるのではないかと、わたしは思います。そのためには、資本深化(一人当たり資本の増加; APF上の右移動)、技術革新(APFの上方シフト)により、経済成長をうながすことが極めて重要です。

一人当たり生産性が高まれば、必然的に賃金は上昇するでしょう。

◎ 労働の 分配率は 市場での 規律で決まる 恣意的でなく (経済学短歌)

◎ 労働資本 分配率の 決定は 二者の限界 代替率で (経済学短歌)

◎ 人口の 減少社会で 成長は 資本深化と 技術革新 (経済学短歌)

◎ 人口の 減少こそは パーキャピタ(パアキャピタ: 一人当たり) 豊かさ求む 皆の行動 (経済学短歌)

by Kota Nakako

2021/12/23

 

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