新・利他の経済学-9 The New Economics of Altruism

AD-AS分析 AD-AS Analysis

AD-ASモデルについて述べます。ADはAggregate Demandの略で総需要、ASはAggregate Supplyの略で総供給を意味します。AD-AS分析は、ミクロ経済学において財価格を縦軸にとり、財の需要量、供給量を横軸にとって、その関係をみるのと同じように、マクロ経済にアプローチするものです。縦軸に物価水準P、横軸に総需要、総供給をとります(下図)。ミクロ経済の価格分析と異なるのは、AS曲線は、完全雇用水準で垂直になることです。

ケインズ経済学では、実証的な立場から不完全雇用均衡を一般化して(完全雇用均衡をスペシャルケースとして)分析します。下図のように、均衡国民所得Y*は、完全雇用国民所得Yfよりも低い水準になるケースを考慮します。これは、不完全雇用均衡においてISバランス、三面等価が成り立っていることを意味します。

◎ 物価たて 所得をよこに マクロなる 均衡さぐる AD-AS(エイディーエイエス) (経済学短歌)

さらに言えば、AD-AS分析は、実証的経済モデルの中に、財市場のみを扱った45度線分析、財市場と貨幣市場を扱ったIS-LM分析からさらに進めて、労働市場を加えたものです。つまり、財市場、貨幣市場、労働市場を視野にいれたケインズ経済学の全体をあらわすモデルです。勿論、45度線分析、IS-LM分析と、積み上げてきた土台があって、初めて説得力のあるモデルであると言えます。

◎ ADと AS分析 含むのは 財と貨幣に 労働市場 (経済学短歌)

◎ ADの 曲線なるは 財・貨幣 均衡させる 物価と所得 (経済学短歌)

◎ ASの 曲線なるは 労働の 需給をあわす 物価と所得 (経済学短歌)

AD曲線 Aggregate Demand Curve

まず、AD曲線にフォーカスして説明します。AD曲線を導き出す背後には。IS-LM分析があります。IS-LM分析で物価水準Pが関係するのは、実質貨幣供給M/Pです。

IS-LM分析とAD曲線の関係を下図に示しました。つまり、物価水準Pが減少すると(P’ > P‘’)、名目マネーサプライMを一定とすると、実質貨幣供給M/Pが増加し、LM曲線が右シフトするわけです。このためIS-LMの均衡国民所得は増加します。したがって、AD曲線は右下がりとなるわけです。

◎ ADは IS-LM(アイエスエルム) 均衡の 軌跡を示す 物価が変数 (経済学短歌)

◎ ADは 財・貨幣市場 均衡の 軌跡を示す 物価が変数 (経済学短歌)

AS曲線 Aggregate Supply Curve

次に、AS曲線をみましょう。冒頭に説明したように、完全雇用国民所得でAS曲線は垂直になります。つまり、それ以上は供給を増やすことができないため、総需要ASがそれを上回っても物価水準Pが上昇するだけです。Pの上昇によって需給均衡が保たれることになります。付け加えるならば、ケインズが「一般理論」でいっているように、古典派経済学では、賃金が収縮的に変化する完全雇用均衡を前提としているので、AS曲線は垂直になります。

右上がりのAS曲線は、物価水準の上昇にしたがって実質貨幣賃金W/Pが減少し、完全雇用が達成するまで供給が増えることを意味しています。

古典派経済学では、賃金が労働の需給を反映して、収縮的に動くことを前提にしています。ケインズ経済学では、名目賃金Wが硬直的であることをモデルに取り入れます。

労働需要は、労働限界生産力MPL=実質賃金P/W となるように決まります(古典派の第一公準)。一方、労働供給は労働の限界不効用(余暇の効用MUL)=実質賃金W/P です。(古典派の第二公準)。

下図は、①硬直的な名目賃金W=W*=>物価水準Pの変動(P1 <P2 <P3)=> ②労働需要曲線の導出( L1 <L2 <L3=LF ; LF 完全雇用)=> ③労働投入量に対応する国民所得Yの導出(Y1 <Y2 <Y3=YF ; YF 完全雇用国民所得)=> ④物価水準(P1 <P2 <P3)に対する国民所得Yの導出(Y<Y2 <Y3=YF ; YF 完全雇用国民所得)というステップで、総供給曲線ASを導出したものです。AS曲線はYF で垂直になります。完全雇用水準以上は生産、供給できないからです。また、Y1 、Y2 では非自発的失業が発生しています。

くりかえしになりますが、ケインズはこの古典派の完全雇用均衡をスペシャルケースであって、一般的ではないとして不完全雇用均衡を経済モデルに取り入れたのです。それがゆえに、ケインズ経済学は革新的であり、経済学の歴史、発展において決定的な重要性をもち、実践的な強み、エッジをもったといえるでしょう。

だそくですが、これにはケインズが、経済学者であると同時に、実務家、投資家であったことが深く関係しています。わたしは特にケインズが投資家であったことが極めて重要であったと思っています。株式投資で巨額の資産を築きました。商品投資で破綻の危機に陥ったこともありました。

付け加えるならば、古典派経済学の理論構築で決定的な影響力をもったリカードも、証券ブローカーでした。つまり経済学とは、実践しながら、実業、実生活で活用しながら磨いていくものなのです。経済学が実学であるゆえんです。

◎ 賃金の 硬直性が あるゆえに 非自発的なる 失業生ず (経済学短歌)

◎ 古典派の AS曲線 垂直だ 完全雇用 供給水準 (経済学短歌)

◎ 古典派の 総供給(ソーキョーキュー)曲線 背後には 非自発失業 無しと知るべし (経済学短歌)

◎ 古典派は 貨幣賃金 収縮性 仮定するゆえ 完全雇用 (経済学短歌)

◎ ケインズは 貨幣賃金 硬直性 考慮するゆえ AS(エーエス)右上げ (経済学短歌)

以上のように求められたAD曲線、AS曲線をY-P座標上に描きます。その交点が均衡国民所得となります。くりかえしになりますが、古典派経済学と異なり、ケインズ経済学では不完全雇用均衡をモデルに取り入れています。そして、均衡点で、生産(供給)、支出(需要)、所得(分配)の三面等価が成立しています。それがゆえに「雇用・利子および貨幣の一般理論」というわけです。

by Kota Nakako

2021/11/28

 

 

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