クレーのある部屋5 The Room with pictures of Paul Klee – 5

赤、ピンクの造形 Garden House 1929

青、黄、とそろえば次は、赤であろう。色の三原色。

応接に絵を掛けられるのは三面だ。四面のうち一面は庭に面している窓だ。

色の三原則に基づく絵(プリント)を3枚を飾る、そうすることで、応接空間のインテイリアは、まずはひとつの統一、安定をうることができるだろう。簡単にいえば、まずはインテリアとしてすべきことをしたという気持ちになれる、わたしにとって心地良い空間になる。そして、何より大切なことは、お迎えしたお客様が快適な気持ちになれるのではないか、と思っている。自己満足でないことを期待するのであるが。

ところで、話しはやや脱線するが、三という数字は、人のこころに安定、統一感をもたらす何か、特別の意味をもっているのではないだろうか。

仏教においては三宝一体(仏・法・僧)という言葉があり、聖徳太子は十七条憲法に「篤く三宝を敬え」と示している。キリスト教では、三位一体の教理「父(神)、子(キリスト)、聖霊は、唯一の神が3つの姿となって現れたもので、元来は一体であるとする教理がある。

文学においても、三つにそれぞれ分かれていながら、同じ一つの主題を持つ作品群を三部作とすることがある。ダンテの神曲 は、地獄篇、煉獄篇、天国篇の三篇からなるし、夏目漱石には前期三部作 (三四郎、それから、門)、後期三部作(彼岸過迄、行人、こころ)がある。現代文学においても、村上春樹の羊三部作(風の歌を聴け、1973年のピンボール、羊をめぐる冒険)がある。トールキン(J. R. R. Tolkien)の「指輪物語」(The Lord of the Rings)は、「旅の仲間」(The Fellowship of the Ring)、「二つの塔」(The Two Towers)、「王の帰還」(The Return of the King)の三部作をもって一体としている。

プレゼンテーションなどにおいても、序論、本論、結論で構成すると、相手にメッセージが伝わりやすいということがある。コミュニケーションにおいて、メッセージ、伝えたい主題を3つの切り口から提示すると、発信者(芸術の場合は作者)の意図が伝わりやすいということがあるのだろう。コミュニケーションは難しい。かつて投資銀行時代にプレゼンテーションのトレーニングで、6割伝わればよい方と教えられたことがある。きちんと説明しようとして詳細に入り過ぎるとほとんどメッセージは伝わらないリスクがあるとも。

話を本題に移そう。

「色は私を永遠にとらえた。私と色は一体だ」と述べているクレーの、色の三原色を主体とした作品を飾ることによって、おびただしい数の作品群をもつクレーではあるが、その世界の断片は示せるのではないか、と思っている。もちろん、これはわたしというフィルターを通したクレーの一断片にすぎないが。

クレーは色に関連して、”Creative Confession, 1922″で次のように述べている。

「これ*に対応して、形、運動、反対運動の同時的な統一がある。つまり、デュロネイのいう分離した色を利用することで、視覚的な対立を統一するような色の使い方だ。それぞれのエネルギーが、相互補完的なエネルギーとなり、自律的な安定をもたらす。抽象的な要素から、秩序だった宇宙が作られる。数字や文字などの具体的、または抽象的な個々が、それぞれの区別から解放される。これは、宗教における創造に似通っている。」

*男性の原理(悪、刺激、情熱)、と女性の原理(善、成育、平穏)が同時に存在することで、倫理的安定がもたらされること

“To this* corresponds the simultaneous unification of forms, movement and counter-movement, or, to put it more naively, the unification of visual oppositions (in terms of colourism: use of contrasts of divided colour, as in Delaunay). Each energy calls for its complementary energy to achieve self-contained stability based on the play of energies. Out of abstract elements a formal cosmos is ultimately created independent of their groupings as concrete objects or abstract things such as numbers or letters, which we discover to be so closely similar to the Creation that a breath is sufficient to turn an expression of religious feelings or religion, into reality.”

* The simultaneous existence of the masculine principle (evil, stimulating, passionate) and the feminine principle (good, growing, calm) result in a condition of ethical stability.

クレーは、一見対立する色や形象を使って、新しい統一した世界をつくりだす、それこそが創造である、と言っていると理解したらよいだろうか。

アフロのクレーの作品リストから、赤、ピンク、橙色系の絵を物色する。

Allegorische Figurine
Dryads
Glass Facade 1940
Schnere Dammerung in X
Die Sangerin derkosmischen Oper
Italian City
Strasse im Lager
Felsentemple mit Tannen
Clown
Garden House
Haeusliches Requem
Planenineg Maschinenanlag
Zauberkuastler
Rosenwind
etc.

などをリストアップした。これらは、赤系の絵(プリント)という意識でピックアップしたもので、厳密にはそのカテゴリーに入らないものもあるかもしれない。わたしのイメージによるものだ。

わたしは、いずれためすにしても、当初は、激しい、または暗い赤系の絵(プリント)は避けようと思った。そして選んだのは、

Garden House

これは、1929年作の横長のピンクの作品だ。描かれた形象は、建物であり、文字通りガーデンハウスだ。やや細長い長方形がしゃれた感じを増長している。穏やかで美しい絵(プリント)だ。

オンラインで注文すると、2週間余りで送られてきた。

秋に応接に入って、まず目につく面に飾った。

 

 

 

 

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