ケインズの投資-24 アルファ(α)を説明する苦労 Keynes’ Invest ment-24 Difficulty to explain alpha(α)

アルファ(α)を説明する苦労

優れた投資パフォーマンスは、アルファ(α)が生み出すものだろう。かなりの裁量をもっていたとは言え、ケインズは、しばしば、その投資判断についての説明、説得を(強いられて?)行っている。個人の運用の方が、「プロヴィンシャルやキングスの運用よりもかなり良い」とケインズは、前にも述べている。他者にはない、独自な視点、アルファ(α)をもっているがゆえの優れた投資パフォーマンスであり、それは、同時に他者にはなかなか理解できないしろものであろう。だからこそアルファなわけである。運用会社の他の役員の理解を得ながら行うというのは一苦労だったと推察される。(以上、KNコメント)

一つの良い株は、10の悪い株よりも安全

「1つの良い株は10の悪い株より安全」というのは、ケインズの「厳選された少数株への集中投資」という投資三原則の一つを示している。また、そういった良い株に、(割安な価格で)めぐり会い、大量に購入できる機会は、そう多くはなく貴重であることを述べている。

(背景) ケインズが1940年に財務省に席を移し、政府のアドバイザーとなると、プロヴィンシャルへの活動は減少した。しかし、全く無くなったわけではなかった。以下は、1942年1月にケインズがプロヴィンシャルのために、エルダー・デンプスタ―を10,000株購入した時のこと。スコットは、このような多額の投資について疑念を呈し、向う6ヵ月でその保有を半分にするよう求めた。これに対してのケインズの書簡。

(以下、ケインズの書簡)

(F.C.スコットへの書簡 1942年1月16日付)

親愛なるフランシス、

エルダー・デンプスパ―については、行き過ぎがあり、申し訳ありませんでした。しかし、このように良い株を大量に購入できる機会は、これまでになかなかめぐり会えず、つい我を失いました。一つの良い株は、10の悪い株よりも安全だ、とのかねて寄りの妄想に執われていました。また、他の人たちはこのような妄想をほとんどもっていないのだ、ということ忘れていました。但し、価格は6ペンス上昇していますので、損失することなく、超過分を処分することができるでしょう。

Yours,

[copy initialled] J.M.K.

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(Keynes’ letter to Scott)

To F.C. Scott, 16 January 1942

My dear Francis,

Sorry to have gone too large in Elder Dempster. But, finding a security which was good, which we had not got and of which a large block could actually be purchased – an accumulation of circumstances I had not come across for months – I lost my head. I was also suffering from my chronic delusion that one good share is safer than ten bad ones, and I am always forgetting that hardly anyone else shares this particular delusion. The price has, I think, now gone up about 6d, so you can get rid of any surplus without loss that you would like to.

Yours,

[copy initialled] J.M.K.

By Kota Nakako

2025/08/06

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