2020地価公示レビュー 川越市商業地(1) Appraisal Reveiw: Kawagoe Commericial District-1

川越市の西武新宿線の本川越駅から北へ川越市役所方面に向かうエリアの商業地の地価公示を3回にわたってレビューしたいと思います。対象とする標準地は、本川越駅から3分(250m)の川越5-2(新富町2-25-10)、8分(260m)の川越5-4(新富町1-11-8)、12分(950m)の川越5-11(幸町3-1)の3つです。

幸町周辺は、「一番街蔵造りの町並」と呼ばれる江戸時代の蔵造りの町並みが残る商店街であり、川越市の伝統的建造物保存地区に指定されています。「2016年に川越まつりがユネスコの世界文化遺産に登録され天皇行幸(ぎょうこう)の実績を踏まえて県内で随一の外国観光客の賑わいがみられる地域」との指摘があります。新型コロナ禍(Covid-19)で一時的には、外国観光客の落込みにより悪影響を受けるでしょう。しかし、中長期的には、県内随一の歴史的文化遺産のある観光スポットとしての魅力を維持、高めると思われます。

まず、本川越駅から徒歩3分(250m)の川越5-2新富町2丁目の標準地です。地価公示は㎡当たり532,000円坪約176万円、前年比+2.9%。地積は213㎡、北西15m市道に接道、指定建ぺい率80%、角地なので基準建ぺい率は90%、指定容積率、基準容積率とも400%、最有効使用は中層店舗事務所併用地。

市場の特性としては、「同一需給圏は、川越市およびその周辺市に存する商業地域と判断した。需要者の中心は、業績が良く自己事業の拡張を図っている法人等である。川越市においては、不動産取引件数が概ね横ばいで堅調に推移しており、立地条件の良い商業地は供給が限定されるため、需給関係は強含んでいる。商業地については、取引件数が少なく立地・画地条件等の振幅が大きいため、中心価格帯の特定は困難である」(評価書A) とあります。また、「需要者の中心は、主として地元個人商店、法人又は店舗展開を図る資金力のある法人である。駅前の中心商業地から中大型店の出店による郊外部への商業立地の分散化が進む一方で、各店舗間の競争も厳しくなっており、今後もこの傾向は続くと予測される。中心部の希少な商業地域であり、元来供給が少なく」(同B)

取引事例比較法にもとづく比準価格は547,000~548,000円/㎡、収益還元法にもとづく収益価格は、443,000~457,000円/㎡で、収益価格は比準価格の8割程度(80.8~83.5%)となっています。

鑑定強化額の決定にあたっては、「比準価格は、需要者の中心である自己利用目的の法人等の視点から、集客性・利便性を要因比較して試算したものであり、現実の取引市場を反映した実証的な価格といえるため説得力は高い。収益価格は、賃貸経営の投資採算性を反映した価格であり一定の説得力を有する。以上の分析より、本件では比準価格を重視し、収益価格を比較考量して、代表標準地との検討も踏まえ、鑑定評価額を上記の通り決定した」(A)、「中層の店舗ビル等が建ち並ぶ駅前の商業地域であり、主として利便性等の立地条件の良さ、観光客を含めた顧客の通行量や事業収益性に基づく自己事業目的での取引が中心になると考えられる」(B)とし比準価格を重視して決定されています。

価格形成要因の変動状況として、一般的要因について、「川越市においては、人口が微増傾向で、観光客も増加基調の模様であり、商業地の不動産市況は堅調といえる」、地域要因については、「全般的市況の中で、特に駅近の中心商業地域の不動産は稀少価値もあり、地価動向は上昇傾向で推移している」との指摘があります。

[参考:収益価格算定にあたっての想定建物はS(鉄骨)造5階建の中層店舗兼事務所ビル、延床面積850.10㎡(<基準容積率852㎡)、有効率87.0%、1,2階が店舗、3~5階事務所、基準階1Fの月額実質賃料4,620/㎡、支払賃料4,471/㎡(坪14,780円)、基準階1Fを100とすると、2F68、3~5F61。建物等の初期投資額は236百万円、277,614円/㎡(坪約91.8万円)。還元利回りは4.6%(基本利率4.8%、賃料の変動率0.2%)]

以上

中湖康太 Kota Nakako

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